1隻対1隻で競うヨットレース、これがマッチレースです。
通常、オリンピックのようなヨットレースでは多数のヨットがいっせいにスタートして順位 を競います。こういったレースでは1位をとりつづけなくても、上位の順位 をキープしていれば、いくつかのレースをこなすうちに総合成績で優勝することもできます。
 しかし、マッチレースでは常にライバルは1隻。2位になることは負けることなのです。レース展開もシンプルでわかりやすく、最近のヨットレースではこのマッチレース形式がふえています。
 また、マッチレースのためのレースルールがあり、通常のヨットレース以上に2隻のヨットが激しく戦うことができるようになっています。さらに、激しく競い合うヨットの動きをチェックするために海上審判員制度が設けられ、ルール違反などをおかしたヨットはその場でペナルティの判定を下されます。レースのテンポが小気味よく見ていてわかりやすい、これがマッチレースなのです。


■スタートの手続き

 マッチレースのなかでもスタート前の駆け引きは見所のひとつ。このスターティング・マニューバーと呼ばれる駆け引きが始るのはスタート4分前だが、その前にレース艇はルールで定める一定の手続きに従ってスタートラインの内側に入らねばならない。マッチレースをよりよく理解するために、このスタート前の手続きを今一度、確認しておこう。
 まず、レース艇はスタートラインの右側から入るか左側から入るはあらかじめ決められている。右側(スターボードサイド)から入るレース艇は船尾に黄色の旗を掲げ、左側(ポートサイド)から入るレース艇は青色の旗を掲げている。
 レース艇は4分前の準備信号を示す旗(P旗)が本部船に上がったときには指定された側のスタートマークからスタートラインに対して直角に引いた線の外側にいなければならない。そして、準備信号が上がってから2分の間にコースサイドからプレスタートサイドに向かってスタートラインを完全に横切らなければならない。こうすることによってはじめてスタートする権利が確保できるということも言えるだろう。この後、スタートまでの間がスターティング・マニューバーの時間ということになる。
 一方、レース本部は、スタート10分前からスタートまでの間、本部船に上記のような視覚信号(国際信号旗)を上げたり下げたりすることによってスタートまでの時間の経過を示している。海の上では音による信号はあくまで補助手段。旗などの視覚信号によってすべてを表すので、この一連の手続きもよく理解しておこう。